結論:マカオ料理(土生菜)は、土生葡人の家庭で受けつがれてきた料理です。ポルトガル式の料理法を土台に、航路で集めた香辛料と中国の調味料が加わっています。
この記事でわかること
- 16世紀、ポルトガル人がアフリカ・インド・マラッカを通る途中で、手に入らない材料を土地のもので置きかえたのが始まり
- 香辛料はサフラン・カレー・クローブ・シナモン・クミン、中国の調味料は八角・しょうが・ねぎ・しょうゆ・焼酎
- 文化局の代表的な料理は大雜燴・葡國雞・免治肉・非洲雞など。家ごとにレシピがちがう
- 旅遊局の料理紹介の3言語名では「Africana」「Macau」「Caril」が目印
- 2019年にマカオの非遺名錄、2021年に国家級の一覧へ
★ この記事だけの情報
- 旅遊局の料理紹介から、料理名を中国語・英語・ポルトガル語の3つでそろえました(メニューで探すときの目印つき)
- アフリカンチキンは、同じ旅遊局でも「ポルトガル料理」と「土生菜」の両方で紹介されています(店の看板より料理名で探す理由)
- 2026年8月、土生葡人の「肥茶」の習慣が文化遺産の清單に入りました(行事ごとに並ぶ料理も分かります)
この記事に出てくる言葉
- 土生葡人
- ポルトガル人が、華人や東南アジア・南アジアの人びとと結婚してできた人びとです。
マカニーズとよばれることもあります - 土生菜
- 土生葡人の家庭で受けつがれてきた料理です。
英語では Macanese cuisine、ポルトガル語では Gastronomia Macaense と書かれます - 文化局
- マカオ政府で、文化財や無形文化遺産を守っている役所です。
ポルトガル語名 Instituto Cultural の頭文字から IC とも書かれます - 旅遊局
- マカオ政府で、観光の案内をしている役所です。
英語の頭文字から MGTO とも書かれます - 非遺
- 非物質文化遺産の略で、形のない文化遺産のことです。料理の作り方やお祭りが入ります。
マカオには清單と名錄の2つの一覧があり、名錄は清單の中から選ばれます - 馬介休
- 塩づけのタラです。ポルトガル語では Bacalhau と書きます。
- 肥茶
- 土生葡人が、昼ごはんと晩ごはんのあいだに開くごちそうの集まりです。
ポルトガル語では Chá Gordo と書きます
マカオ料理は、だれが作ってきた料理なのか?
作ってきたのは、土生葡人(とせいポルトガルじん)の家庭です。ポルトガル人が、華人やマレー人、フィリピン人、インド人と結婚してできた人びとのことです。
マカオで食べられる料理は、じつは1種類ではありません。旅遊局の美食サイトも、土生菜・中国料理・各国の料理の3つに分けて案内しています。
このうち土生葡人の家で受けつがれてきた味が、土生菜です。英語では Macanese cuisine とよばれます。
船で東へ来た人たちが、途中で味を集めた
そもそも始まりは、16世紀の初めでした。ポルトガル人はアフリカの西の海岸を下り、喜望峰を回りました。そしてインドとマラッカを通って、マカオに着いています。
航海は長い旅です。途中の港にもとまります。そのあいだに、アフリカやアジアの暮らし方や食べ方が、少しずつ混ざっていきました。
決まったレシピがない、家の料理
文化局の資料によると、この料理はまず、母親から娘へ教えられていました。その後、家ごとにレシピを書きためる形で残ってきたそうです。
しかも家庭ごとに作り方がちがうので、決まったレシピがありません。同じ名前でも、家によって味が変わるのが当たり前の料理です。
店の味も同じです。
20世紀の中ごろには、多くの土生葡人が海外へ移りました。そのうえ食べ方が変わり、材料の一部はマカオで手に入らなくなりました。
家のレシピもほとんど公開されません。そのため受けつぐのが難しくなっている、と文化局は書いています。
ポルトガル料理と、どこがちがうのか?
答えは材料にあります。土台はポルトガルの料理の仕方です。一方で、材料と香辛料は、航路の先々とマカオで足されていきました。
手に入らない材料を、その土地のもので置きかえた
ポルトガル人は、まず月桂樹の葉・オリーブ油・腸詰め・ワインを持って東へ向かいました。ところが、アフリカやインド、マレー半島では、使いなれた材料がそろいません。
そのため、その土地の材料と料理の仕方を取り入れて作るようになりました。足りないものを埋めた結果が、いまの味の土台です。
なぜ香辛料が、こんなに入っているのか?
東洋の香辛料は、ヨーロッパと極東を結ぶ海の貿易で、中心の商品でした。しかもポルトガル人は、それを最初に知って商ったヨーロッパ人だった、と文化局は説明しています。
だから、香辛料をふだんの食事に入れるのは自然な流れでした。一部の料理では、インドや東南アジアなどの香辛料も使います。サフラン・カレー・クローブ・シナモン・クミンといったものです。
さらに中国の調味料として、八角・しょうが・ねぎ・しょうゆ・焼酎も使われます。
文化局の資料にある材料と調味料を、来たところごとに分けました。
| 来たところ | 材料・調味料 |
|---|---|
| ポルトガルから持ってきた | 月桂樹の葉・オリーブ油・腸詰め・ワイン |
| ポルトガルの材料 | 馬介休・ポルトガルの赤いんげん豆・西洋の腸詰め・黒オリーブ |
| インド・東南アジア | サフラン・カレー・クローブ・シナモン・クミン |
| 中国 | 八角・しょうが・ねぎ・しょうゆ・焼酎 |
出典:文化局『項目列入《非物質文化遺產名錄》公開諮詢』9.1 土生葡人美食烹飪技藝(2026-09-23確認)。馬介休は塩漬けのタラ
サラダ1皿でも、ちがいが見える
旅遊局の料理紹介にも、具体的に分かる例があります。ポルトガルの伝統のサラダは、ツナと酢漬けのひよこ豆を混ぜたものです。
一方でマカオ式は、ツナと野菜を混ぜたものだと書かれています。同じツナでも、合わせる相手が変わっているわけです。
ただし、ワインを使い、玉ねぎとトマトで煮込むところには、ポルトガルの料理の流れが残っています。
代表的な料理には、なにがある?
文化局は代表的な料理として、大雜燴・葡國雞・免治肉・非洲雞・鹹蝦酸子炆豬肉を挙げています。ここでは、公式の説明で中身まで分かるものを取り上げます。
まずはミンチからです。
ミンチ(免治)
ミンチは、ひき肉か細かく切った肉に、油で揚げたじゃがいもの角切りを混ぜて炒めた料理です。文化局は、土生葡人の家庭でよく作られる料理だとしています。
旅遊局の紹介では、さらに玉ねぎやチーズもいっしょに炒めます。そして食べるときに、卵をのせるそうです。
アフリカンチキン(非洲雞)
文化局によると、アフリカの料理の仕方に影響を受けた料理です。旅遊局の紹介では、焼いた鶏に、とうがらしやこしょう、ハーブで作ったソースをかけます。
もっとも、作り方は店によってちがいます。辛いカレーのソースを使う店も、揚げた鶏にソースをかける店もある、と旅遊局は書いています。
葡國雞と大雜燴
名前に「葡國」(ポルトガル)とつく葡國雞は、実はマカオ独特の料理です。ココナッツミルクやカレー、ターメリックを使います。
文化局の写真の説明では、これらは東南アジアの料理でよく使う材料とされています。
一方で大雜燴は、里芋や大根、中国式の腸詰め、干した鴨など、中国料理の材料を使います。
名前だけでは分かりません。
血鴨という料理は、ポルトガル語で「Ade Cabidela」と書きます。Ade は鴨をさす古いポルトガル語で、本国ではもうあまり使われないそうです。
甘いものは、卵と砂糖をたっぷり
甘いものには卵と砂糖をたくさん使うため、甘さが濃くなります。例えば牛油糕(ポルトガル語で Aluá)は、クリスマスに欠かせないお菓子です。
材料には小麦粉、バター、アーモンド、氷砂糖、ココナッツミルク、牛乳などを使います。途中で8時間かき混ぜつづけ、できあがるまで3日かかります。
ちなみにエッグタルトは、文化局の一覧では土生菜と別の項目です。2025年に、単独で名錄に入りました。くわしくはマカオのエッグタルトの話へ。
メニューでは、どう書かれている?
手がかりは料理名です。旅遊局の料理紹介は、同じ料理を中国語・英語・ポルトガル語の3つの名前で載せています。つまりメニューで探すときの手がかりになります。
例えばアフリカンチキンは、中国語で「非洲雞」、ポルトガル語で「Galinha à Africana」です。ミンチは「澳門式免治」や「Minchi ao Estilo de Macau」と書かれます。
旅遊局の料理紹介で、3つの言葉の名前がそろう料理です。アフリカンチキンは、このページではポルトガル式の料理として紹介されています。
| 日本での呼び方 | 中国語 | 英語 | ポルトガル語 |
|---|---|---|---|
| アフリカンチキン | 非洲雞 | African Chicken | Galinha à Africana |
| ミンチ | 澳門式免治 | Minchi, Macao Style | Minchi ao Estilo de Macau |
| えびのカレー | 咖哩大蝦 | Shrimp in Curry Sauce | Caril de Camarão |
| かにのカレー | 咖哩炒蟹 | Crab Curry | Caril de Caranguejo |
出典:マカオ政府旅遊局『土生菜及葡國菜』繁中・英・葡の各版(2026-09-23確認、ページ更新は2025年4月10日)
「Caril」とあれば、カレーの料理
まず探したいのは1語です。ポルトガル語の名前では、「Caril」が目印になります。旅遊局の一覧では、Caril de Camarãoが咖哩大蝦にあたります。
同じようにCaril de Caranguejoは、咖哩炒蟹のことです。
このうち咖哩大蝦を、旅遊局は地元らしい土生のカレー料理だと紹介しています。
一方、咖哩炒蟹はカニを丸ごと使う料理です。インドの影響が大きく、量も多いので、2〜3人で分けるとよいそうです。
★ 独自の比較・試算|メニューで探すときの3つの目印
1つめは、ポルトガル語の「Caril」です。カレーの料理を指し、Caril de CamarãoやCaril de Caranguejoのように使われます。
2つめは「Africana」。Galinha à Africanaがアフリカンチキンで、中国語では非洲雞です。
3つめは「Macau」や「澳門式」。ミンチはMinchi ao Estilo de Macau、中国語で澳門式免治と書かれます。
英語のメニューしかない店でも、表の英語名と見くらべれば探せます。
旅遊局『土生菜及葡國菜』の繁中・英・葡の3版を、主菜の並びで突き合わせた(2026-09-23確認)
この料理は、どうやって守られているのか?
守り方は3段です。土生菜の作り方は、マカオの無形文化遺産として登録されています。さらに中国の国の一覧にも入っています。
2017年に清單、2019年に名錄
文化局は2017年、初めて非遺清單を作り、15の項目を入れました。土生葡人美食烹飪技藝は、そのうちの1つです。
2019年には、社會文化司司長の第200/2019號批示で、12の項目が名錄に入りました。名錄は、清單の中から大事なものを選んだ一覧です。土生菜の作り方も、その12項目に入っています。
旅遊局の美食サイトには、実は「2012年に登録」という書き方もあります。ただし登録を決める文化局の一覧では、清單が2017年、名錄が2019年です。
2021年に、国の一覧へ
2021年6月10日、中国の国務院が第5批の国家級非遺の一覧を公表しました。マカオが申請した3項目がすべて入り、土生菜の作り方もその1つです。
その結果、マカオの国家級非遺は11項目になりました。また同じ年の9月に発表された一覧では、澳門旅遊學院(2024年4月から澳門旅遊大學)が選ばれました。
守る役目を負う団体です。
そのうえ文化局は2020年8月から、土生菜のレシピを世界から集めています。集めたレシピは「澳門土生菜資料庫」に収め、だれでも見られるようにするとしています。
2026年8月、「肥茶」も清單に入った
もう一つ、土生葡人には肥茶とよばれる集まりがあります。昼ごはんと晩ごはんのあいだに開く、ごちそうの会です。
2026年8月、文化局はこの習慣を非遺清單に加えました。料理は20〜30品にもなるそうです。
★ 最新情報|肥茶で並ぶ料理は、行事で変わる
2026年8月に清單に入った肥茶では、行事によって用意する料理が変わります。
結婚式の肥茶には、蛋絲がよく並びます。クリスマスの肥茶では、耶穌枕頭や豆撈を作るそうです。
牛油糕(Aluá)もクリスマスのお菓子です。つまり土生菜は、ふだんの食事と行事のごちそうの両方を持っています。
文化局 澳門文化遺產網『土生葡人肥茶習俗』『牛油糕製作技藝』(2026-09-23確認)
同じ名前なのに、店で味がちがうのはなぜ?
ハズレではありません。家庭ごとにレシピがちがう料理なので、店ごとに味がちがっても不思議ではありません。実際に旅遊局も、アフリカンチキンの作り方は店によってちがうと書いています。
「ポルトガル料理」と書かれていることもある
呼び方も1つではありません。旅遊局の料理紹介は、土生菜とポルトガル料理を1つのページにまとめています。前菜7品、主菜15品、甘いもの4品が並びますが、一覧には、どれが土生菜かの区別が付いていません。
例えばアフリカンチキンは、そのページでは「伝統的なポルトガル式の料理」と紹介されています。一方で、同じ旅遊局の美食サイトは、土生菜の代表として挙げています。
だから店の看板が「ポルトガル料理」でも、土生菜が並んでいることは考えられます。店の種類より、料理の名前で探すほうが確かです。
評価の高い店から選びたいときは、マカオのミシュランの星の店の選び方も手がかりになります。
★ 知らないと損|同じ役所でも、呼び方が分かれている
アフリカンチキンは、旅遊局の料理紹介では「ポルトガル式の料理」です。ところが旅遊局の美食サイトでは、土生菜の代表として出てきます。
文化局の資料でも、非洲雞は土生菜の代表的な料理に入っています。
ラベルで決めつけず、料理名で探すのが確かです。店ごとに味がちがうのも、家の料理だった名残と考えられます。
旅遊局の料理紹介と美食サイト、文化局の名錄文本(2026-09-23確認)
前菜と主菜は、いっしょに出てくることが多い
旅遊局によると、たいていの店では前菜と主菜が同時にテーブルへ運ばれます。咖哩炒蟹のように量の多い料理もあるので、頼む数は人数に合わせて考えると安心です。
まとめ:料理名を3つの言葉で覚えておく
このように土生菜は、ポルトガルの料理を土台に、航路の香辛料と中国の調味料が重なってできた家庭の味です。店で探すなら、中国語とポルトガル語の料理名を覚えておくのが近道になります。
タイパ(食べ歩きの通りがある島)を歩くなら、タイパ観光と龍環葡韻の回り方でも土生葡人の話が読めます。
店での支払いやサービス料は、マカオのレストランのきまりで確かめられます。
マカオの食べもの全体の選び方は、マカオのグルメの選び方に戻ってください。
よくある質問
マカオ料理とポルトガル料理は、同じものですか?
ちがいます。ポルトガル式の料理法を土台に、アフリカやアジア、中国の材料と調味料が加わり、土生葡人の家庭で別の料理に育ちました。
マカオ料理を作ってきたのは、どんな人たちですか?
土生葡人とよばれる人たちの家庭が作ってきました。ポルトガル人が華人やマレー人、インド人などと結婚してできた人びとです。
ミンチは、どんな料理ですか?
ひき肉に、揚げたじゃがいもの角切りを混ぜて炒めます。土生葡人の家庭でよく作られる料理です。
アフリカンチキンは、ポルトガル語で何と書きますか?
「Galinha à Africana」です。中国語では「非洲雞」と書きます。
マカオ料理は、文化遺産に登録されていますか?
はい。2019年にマカオの非遺名錄に入り、2021年には中国の国家級の一覧にも入りました。
店によって味がちがうのは、なぜですか?
もともと家庭ごとに作り方がちがい、決まったレシピがない料理だからです。旅遊局も、アフリカンチキンの作り方は店ごとにちがうと書いています。
この記事の調べ方
- 料理の成り立ちは、文化局の澳門文化遺產網の繁体字・英語・ポルトガル語の3版を読み比べています
- 材料と代表的な料理は、文化局が2019年3月の公開諮詢で出した名錄の文本(PDF)から取っています
- 料理名の3言語対照は、旅遊局『土生菜及葡國菜』の繁中・英・葡の3版を主菜の並びで突き合わせています
- 清單・名錄・国家級の年は、文化局の一覧と政府ポータルの発表文で確かめました
- 店ごとの料金や営業時間は扱っていません。公式にまとまった一覧がないためです
この記事の出典
- 文化局 龍環葡韻(2026-09-23 に確認)
- 文化局 土生葡人美食烹飪技藝(2026-09-23 に確認)
- IC Gastronomia Macaense(2026-09-23 に確認)
- 文化局 名錄公開諮詢の文本(2026-09-23 に確認)
- 文化局 非遺清單(2026-09-23 に確認)
- 文化局 非遺名錄(2026-09-23 に確認)
- 政府ポータル 国家級名録入り(2026-09-23 に確認)
- 政府ポータル 保護単位(2026-09-23 に確認)
- 文化局 牛油糕製作技藝(2026-09-23 に確認)
- 文化局 土生葡人肥茶習俗(2026-09-23 に確認)
- 旅遊局 土生菜及葡國菜(2026-09-23 に確認)
- DST Pratos Macaenses(2026-09-23 に確認)
- MGTO Macao Gastronomy(2026-09-23 に確認)
- 文化局 土生菜食譜徵集(2026-09-23 に確認)
- 新聞局 澳門旅遊大學(2026-09-23 に確認)
- 政府ポータル 清單追加2026(2026-09-23 に確認)


