結論:マカオのエッグタルトは、ポルトガルのナタをもとにマカオで育ったお菓子です。ロード・ストウズ・ベーカリーなら、コロアンのほかタイパとコタイでも買えます。
この記事でわかること
- 文化局によると、前世紀の終わりにコロアンの餅店が、ポルトガル式に英国風の味を合わせた独自のタルトを売り出した
- ロード・ストウズ・ベーカリーは1989年9月15日にコロアンで開店し、1990年に独自のレシピを作った(店の説明)。マカオに7店
- 2025年9月26日、エッグタルトの作り方がマカオの非遺名錄に入った
- ロンドナー店のカフェのメニューでは1個MOP13(約248円)
- 香港の蛋撻は広州から来た別のお菓子。中身は砂糖水と卵の液
★ この記事だけの情報
- マカオの葡撻と香港の蛋撻の違いを、両方の政府の文化遺産の資料で比べました(「皮の違い」だけでは見分けられない理由つき)
- ロード・ストウズ・ベーカリーのマカオの7店を、営業時間と休みつきで一覧にしました(夜に買える店が分かります)
- 2025年9月26日、エッグタルトの作り方がマカオの非遺名錄に入りました(登録されたのは店ではなく作り方)
この記事に出てくる言葉
- 葡撻
- マカオのエッグタルトの中国語名。「ポルトガル式のタルト」の意味です。
ポルトガル語では pastel de nata - 蛋撻
- 香港などのエッグタルトの中国語名です。
葡撻とは中身が違います - パステル・デ・ナタ
- ポルトガルのエッグタルトです。ナタとも略します。
- タイパ
- マカオ半島の南の島。空港と官也街があります。
- コロアン
- マカオのいちばん南の、古い村が残る地域です。
中国語では路環 - コタイ
- タイパとコロアンのあいだの埋め立て地です。
- IR
- カジノやホテルが1つにまとまった大きな施設です。
企業の「IR」とは別の意味 - 非遺名錄
- マカオ政府が特に大事な、形のない文化遺産を守る一覧です。
- パタカ
- マカオのお金。1パタカは約19.1円(2026年9月8日時点)です。
記号は MOP - 香港ドル
- 香港のお金。マカオでもほぼ使えます。
- シャトルバス
- ホテルなどが走らせる無料の送迎バスです。
- 忌廉
- 生クリームのことです。
- 文化局
- マカオ政府で、文化財や無形文化遺産を守る役所です。
- 旅遊局
- マカオ政府で、観光の案内をする役所です。
- 土生菜
- 土生葡人の家庭で受けつがれてきた料理です。
なぜマカオの名物が、エッグタルトなのか?
ポルトガルのエッグタルトをもとに、マカオの店が独自のタルトを作り、それが町に広まったからです。
旅遊局も、ポルトガルから来たデザートで特に有名なものとして、葡撻を挙げています。2025年には、作り方が文化遺産にも入りました。
始まりは、ポルトガルの修道院のお菓子
マカオの葡撻(ポルトガル式エッグタルト)は、ポルトガルのエッグタルトがもとだと考えられています。文化局の資料にある説明です。
そのポルトガルのタルトは、修道院で生まれました。昔の修道院では、服をぱりっとさせるのに卵白を使っていたそうです。
残った卵黄は、そのためお菓子作りに使われたそうです。
リスボンの修道院のエッグタルトのレシピは、やがて町に広まりました。その結果、リスボンの人びとの日々のお菓子になったと文化局は書いています。
前世紀の終わり、コロアンの餅店から
舞台はコロアン(マカオのいちばん南の、古い村が残る地域)です。文化局の資料は、前世紀の終わりにここの餅店が独自のタルトを売り出した、と書いています。
ポルトガルのタルトを手本に、英国風の味と香港・マカオの食文化を合わせたもので、大成功したそうです。その後、ほかの店も次々にいろいろな葡撻を作りました。資料は、その店の名前を出していません。
1989年に開いた、ロード・ストウズ・ベーカリー
一方、1989年9月15日にコロアンで開いた店があります。ロード・ストウズ・ベーカリー(Lord Stow’s Bakery/安德魯餅店)です。創業者はアンドリュー・ストウ(Andrew Stow/安德魯)というイギリス人です。そもそもは薬の仕事で、1979年にマカオへ来ました。
店は、いまアジアで知られる形の「ポルトガル式」エッグタルトを、アジアに持ちこんだのは自分たちだと紹介しています。
ナタを知ったのは、80年代の終わりのポルトガル旅行でした。レシピは、しかし持っていなかったと店の公式サイトは書いています。
自分で試作をくり返し、その結果1990年に独自のレシピを作りました。薬の仕事がら、実験には慣れていたそうです。
店名の「Lord」は、実はあだ名です。ホテルのポルトガル料理店で働いていたころ、地元のポルトガル人がそうよびました。
香港、そして大阪へ
このタルトは、やがてマカオの外にも出ていきます。
1997年、同じ名前の店が香港に開きました。1999年4月には大阪に、同じ年の12月にはフィリピンにも、このエッグタルトが渡ったと公式サイトは書いています。
2006年、マカオ政府は彼に、観光への功績をたたえる勲章を贈りました。同じ年の10月25日、彼は亡くなります。
店は、その後娘と妹が続けています。
★ 最新情報|2025年、作り方がマカオの文化遺産に
2025年9月26日、エッグタルトの作り方がマカオの非遺名錄に入りました。
このとき加わったのは12項目で、名錄は合わせて24項目です。ただし、登録されたのは作り方で、特定の店ではありません。
登録の前に開いた意見募集には、931件の意見が集まりました。
マカオ文化局の発表『《非物質文化遺產名錄》新增12個項目』(2026-09-23確認)
ポルトガルのナタと、どこが違うのか?
土台は同じです。マカオでは、ただし店ごとに配合を変えながら、焦がしたカラメルの香りのタルトに育ちました。
リスボンの店は、1837年から焼いている
ポルトガルのナタは、パステル・デ・ナタ(Pastel de Nata)といいます。リスボンのベレン地区には、1837年から焼いている店があります。
パステイス・デ・ベレン(Pastéis de Belém)です。店の公式サイトによると、1834年にポルトガルの修道院はすべて閉じられました。
ジェロニモス修道院の誰かが、そのため修道院の近くの店で菓子を売り始めたそうです。
1837年からは、修道院に伝わる「秘密のレシピ」で焼いています。レシピは、しかもいまも店の菓子職人しか知らないといいます。
マカオ版は「英国風」と「焦げ目」
ロード・ストウズ・ベーカリーの説明は、一方で「英国風の工夫を入れた」というものです。従来のやり方や材料の一部も省いたと書いています。
文化局は、マカオの葡撻を「焦糖酥皮蛋撻」とよびます。意味は、つまり「焦がしたカラメルと、層になったサクサクの皮のエッグタルト」です。
表面の黒い焦げの斑点も、同様に大きな特徴だと文化局の資料にあります。
材料の量や焼き方は、ただし店ごとに違うと文化局は書いています。「マカオの味」は1つではありません。
作り方を教わる体験もある
文化局によると、作り方を秘方(秘密のレシピ)として、店の中だけで受けつぐ餅店もあります。
料理教室や教育機関は、一方で講座やワークショップで教えています。マカオを訪れた人が作る体験に参加できる旅行を出す旅行会社もある、と文化局は書いています。
マカオでは、どこで買えるのか?
ロード・ストウズ・ベーカリーは、マカオに7つの店を持っています。本店はコロアンにあり、タイパとコタイにも店があります。
本店は、コロアンの村の中
本店の住所は路環市區戴紳禮街1號地下(1 Rua do Tassara, Coloane Town Square)です。毎日7時から21時まで開いています。
行き方は、店の案内では路線バスです。15・21A・26A番なら「路環居民大會堂」で降ります。25・26・50番なら、また「路環市區」が最寄りです。
本店の近くの屠場前地には、カフェが2つあります。エッグタルトの持ち帰り専門店も、同じ屠場前地にあります。
タイパとコタイにも店がある
コロアンまで行けない日は、むしろタイパの店が近道です。氹仔官也街9號栢鴻大廈地下E座にあり、毎日9時から21時まで開いています。
コタイ(タイパとコロアンのあいだの埋め立て地)のIRにも、さらに2つの店があります。IRは、カジノやホテルが1つにまとまった大きな施設のことです。
ザ・ヴェネチアン・マカオ(The Venetian Macao/澳門威尼斯人)の店は、10時から22時30分までです。ロンドナー・マカオ(The Londoner Macao/澳門倫敦人)の店は、一方で10時から22時まで開いています。
どちらの店も、ホテルが出すバスでも行けると案内しています。無料の送迎バスの乗り方は、マカオの無料シャトルバスの乗り方で確かめられます。
7つの店の営業時間
ロード・ストウズ・ベーカリーの公式サイトにある、マカオの店の場所と営業時間です。
| 店 | 地域 | 営業時間 | 休み |
|---|---|---|---|
| 本店 | コロアン | 毎日 7:00〜21:00 | 公式に記載なし |
| カフェ | コロアン | 平日 9:00〜18:00/土日祝 8:00〜18:00 | 公式に記載なし |
| ガーデンカフェ | コロアン | 平日 9:00〜18:00/土日祝 8:00〜18:00 | 公式に記載なし |
| 持ち帰り専門店 | コロアン | 10:00〜18:00 | 水曜日 |
| タイパ店 | タイパ | 毎日 9:00〜21:00 | 公式に記載なし |
| ヴェネチアン店 | コタイ | 毎日 10:00〜22:30 | 公式に記載なし |
| ロンドナー店 | コタイ | 毎日 10:00〜22:00 | 公式に記載なし |
出典:安德魯餅店 公式サイトの各店ページ(2026-09-23確認)。「祝」はマカオの法律で決まった休日
マーガレット・カフェ・エ・ナタは?
エッグタルトの店として、マーガレット・カフェ・エ・ナタの名前を聞くこともあります。英語ではMargaret’s Café e Nata、また中国語では瑪嘉烈蛋撻店と書きます。
地元の電話帳の店舗ページでは、住所は馬統領圍66號です。営業時間と値段は、ただし店の公式の案内で確かめられません。
出かける前に、店に確かめてください。
1個いくらで買えるのか?
ロンドナー店のカフェのメニューでは、1個MOP13(約248円)です。円は、1パタカ=約19.1円(2026年9月8日時点)で計算しています。
これは、ただしカフェで食べるときのメニューです。すべての値段に10%のサービス料が加わる、とメニューに書かれています。
持ち帰りの値段や、ほかの店の値段は、公式サイトに出ていません。店によって値段が違うことも、そのため考えられます。
お金の払い方は、パタカと香港ドルの使い分けで確かめられます。
香港のエッグタルトと、同じものなのか?
名前は似ていますが、来た道が違います。マカオの葡撻はポルトガルから、一方で香港の蛋撻は広州から来ました。資料に書かれた中身も違います。
香港の蛋撻は、広州から来た
香港政府の文化遺産の資料によると、香港の蛋撻は外国の果物のタルトから生まれたといわれます。
1920年代、広州の料理店が、高いバターのかわりにラードで皮を作りました。そこに卵の液を入れたのが始まりとされます。
1940年代には、その後香港へ伝わりました。はじめは、ただし高級な洋食店だけで出していたそうです。
広まったのは1950年代です。冰室(安い洋食を出す喫茶店)で、とりわけ人気になりました。
資料に書かれた中身が違う
香港政府の資料では、蛋撻の中身は砂糖水と卵の液です。これを皮に入れて、約10分焼きます。牛乳や生クリームは、資料に出てきません。
マカオの葡撻は、一方で卵黄だけを使い、牛乳と忌廉(生クリーム)を混ぜます。表面を焦がすのも、また大きな特徴です。
マカオと香港の政府が、それぞれの文化遺産の資料に書いている中身を並べました。
| くらべる点 | マカオの葡撻 | 香港の蛋撻 |
|---|---|---|
| よび名 | 葡撻 | 蛋撻 |
| 来た道 | ポルトガル→マカオ | 広州→香港(1940年代) |
| 皮 | 層になった酥皮 | 酥皮か曲奇皮 |
| 中身 | 卵黄・牛乳・生クリーム・砂糖 | 砂糖水と卵の液 |
| 文化遺産 | マカオの名錄(2025年) | 香港の非遺清單(5.33) |
出典:マカオ文化局『葡撻製作技藝』、香港非物質文化遺產資料庫『蛋撻製作技藝』(いずれも2026-09-23確認)
★ 独自の比較・試算|同じ「エッグタルト」でも、中身が違う
マカオの葡撻は、卵黄だけに牛乳と生クリームを混ぜる、と文化局は書いています。表面の黒い焦げも特徴です。
一方、香港政府の資料が挙げる中身は、砂糖水と卵の液だけです。牛乳や生クリームには触れていません。
来た道も、ポルトガルからと広州からで分かれています。つまり名前が似ていても、別の流れのお菓子です。
マカオ文化局『葡撻製作技藝』と香港政府『蛋撻製作技藝』を比べた(2026-09-23確認)
皮だけでは見分けられない
香港の蛋撻の皮は、実は2種類あります。パイのような酥皮と、クッキーのような曲奇皮です。
酥皮は、小麦粉と水の生地に、油を練りこんだ生地を重ねて折って作ります。作り方は別ですが、層になる点は、つまりマカオの葡撻と同じです。
★ 知らないと損|「マカオはパイ、香港はクッキー」とは限らない
香港の資料には、クッキーのような皮だけでなく、パイのような酥皮の蛋撻も並んでいます。
だから皮だけでは、どちらか決められません。見分ける手がかりは、表面の焦げ目と中のクリームだと考えられます。
香港非物質文化遺產資料庫『蛋撻製作技藝(5.33)』の活動內容(2026-09-23確認)
買いに行くとき、気をつけることは?
店ごとに、閉まる時間と休みが違います。特にコロアンの持ち帰り専門店とカフェは、18時に閉まります。
持ち帰り専門店は10時から18時までで、しかも水曜日が休みです。
2つのカフェも同様に、平日は9時から18時まで。土日と祝日は8時に開きます。
夜に買うなら、だから本店かタイパ店、コタイの2店が確かです。7店のうち、いちばん遅くまで開いているのはヴェネチアン店で、22時30分までです。
同じ店の名前でも、店ごとに味が違っても不思議ではありません。焼き方や材料の量は店ごとに違う、と文化局も書いています。
まとめ:コロアンの本店か、町の近くの店か
このように、マカオのエッグタルトは、ポルトガルの修道院のお菓子をもとに、マカオで独自に育ったものです。
時間がある日は、まずコロアンの本店へ。短い旅なら、タイパやコタイの店が便利です。
甘いもののほかに食事の店も探すなら、ミシュランで選ばれたマカオの店の探し方が手がかりになります。
官也街を歩くなら、タイパ観光と官也街の歩き方と合わせて寄れます。
ほかの料理はマカオ料理(土生菜)の話で読めます。食べもの全体は、最後にマカオのグルメの選び方に戻ってください。
よくある質問
そもそも、なぜマカオでエッグタルトが有名なのですか?
文化局によると、前世紀の終わりにコロアンの餅店がポルトガル式をもとに独自のタルトを売り出し、ほかの店も続きました。2025年には作り方が文化遺産に入りました。
ポルトガルのパステル・デ・ナタと、マカオのエッグタルトは同じですか?
土台は同じです。ただしマカオでは英国風の工夫や店ごとの配合が加わり、焦がしたカラメルの香りのタルトになりました。
ロードストウズの本店は、どこにありますか?
コロアンの路環市區戴紳禮街1號地下です。毎日7:00から21:00まで開いています。
コロアンまで行かなくても買えますか?
買えます。タイパの官也街と、コタイのヴェネチアンとロンドナーにも店があります。
ロード・ストウズのエッグタルトは1個いくらですか?
ロンドナー店のカフェのメニューでは、1個MOP13(約248円)です。カフェではサービス料10%が加わります。
香港のエッグタルトとは何が違いますか?
香港の蛋撻は広州から来ました。香港政府の資料が挙げる中身は砂糖水と卵の液です。マカオの葡撻は卵黄と生クリームを使い、表面を焦がします。
この記事の調べ方
- 店の成り立ちと各店の住所・営業時間は、店の公式サイトの英語版と繁体字版を突き合わせています
- マカオの葡撻の作り方と由来は、文化局の澳門文化遺產網の3言語版で確かめています
- 修道院の卵白の話とコロアンの店の話は、名錄の公開諮詢の文本(2024年)から取っています
- ポルトガル側の由来は、リスボンのPastéis de Belémの公式サイト(ポルトガル語)で確かめました
- 香港の蛋撻は、香港政府の香港非物質文化遺產資料庫の記載を使っています
- 値段はロンドナー店のメニュー(PDF)の値です。持ち帰りの値段は公式に出ていないため扱っていません
この記事の出典
- 文化局 葡撻製作技藝(2026-09-23 に確認)
- IC Confecção de Pastéis de Nata(2026-09-23 に確認)
- 文化局 名錄公開諮詢の文本(2024年)(2026-09-23 に確認)
- 文化局 名錄に12項目を追加(2026-09-23 に確認)
- Pastéis de Belém História(2026-09-23 に確認)
- 旅遊局 土生菜及葡國菜(2026-09-23 に確認)
- 安德魯餅店 沿革(2026-09-23 に確認)
- 安德魯餅店 創業者(2026-09-23 に確認)
- 安德魯餅店 澳門分店(2026-09-23 に確認)
- 安德魯咖啡店(2026-09-23 に確認)
- 安德魯花園咖啡店(2026-09-23 に確認)
- 安德魯蛋撻外賣專門店(2026-09-23 に確認)
- 安德魯餅店 氹仔店(2026-09-23 に確認)
- 安德魯餅店 威尼斯人店(2026-09-23 に確認)
- 安德魯餅店 倫敦人店(2026-09-23 に確認)
- 安德魯餅店 倫敦人店の餐牌(2026-09-23 に確認)
- 中國建設銀行澳門分行 外幣匯率(2026-09-09 に確認)
- 香港非物質文化遺產資料庫 蛋撻製作技藝(2026-09-23 に確認)
- 黃頁 瑪嘉烈蛋撻店(2026-09-23 に確認)


